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日本共産党渋谷区議会議員団

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議会報告
REPORT

トマ孝二議員は、10月13日区議会第3回定例会最終本会議で、2020年度渋谷区一般会計、同国民健康保険事業会計、同介護保険事業会計、同後期高齢者医療事業会計、各歳入歳出決算についての反対討論を行いました。

 トマ孝二議員は、10月13日区議会第3回定例会最終本会議で、2020年度渋谷区一般会計、同国民健康保険事業会計、同介護保険事業会計、同後期高齢者医療事業会計、各歳入歳出決算についての反対討論を行いました。


●2020年度渋谷区一般会計決算・反対討論

2021.10.13 トマ孝二

 私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題となりました認定第1号、令和2年度渋谷区一般会計歳入歳出決算について、反対の討論を行います。
 この年度は、コロナ感染症が蔓延し、区民の生活と営業は深刻な危機に陥りました。私たち区議団が昨年秋に行った区政アンケートには、「アルバイト先が営業中止となり無収入になった」、「50年営業してきた飲食店だが、コロナの影響大で廃業も考えている」、「コロナで派遣切りあいました。未だに仕事が見つからず、体調が悪くても病院に行けない」などの切実な声が寄せられました。私の知り合いの女優から「俳優だけでなく、舞台照明などのスタッフの収入はゼロで本当につらい」との訴えが届きました。
 ところが長谷部区政は、コロナ禍で苦しむ区民への施策は、国や都まかせで区の独自施策はほとんどありませんでした。新宿区や港区では中小業者への家賃補助を実施し、品川区や千代田区では独自の特別給付金を支給、世田谷区では区民に広くPCR検査を実施、八王子市などでは学生支援を行いました。渋谷区では、区議会が中小業者への固定費支援を求める決議を全会一致で上げているにもかかわらず、区としての実施に背を向けました。これでは区民のいのちやくらし、営業を守る区の責任放棄と言わざるを得ません。

 私が反対する第1の理由は、コロナ感染症から区民のいのちと健康、生活を守るための施策が乏しいことです。
 コロナ感染拡大を抑え込むために必要な、無症状者を早期に発見・保護し療養につなげるために、広くPCR検査を実施することが求められましたが、区は実施しませんでした。
 この年度には、保育園で23人、小中学校で11人、介護施設で70人、障がい者施設で27人が新型コロナに感染しました。しかし感染拡大を抑止するための行政検査以外のPCR検査は、介護施設では1641万円の予算に対して218万円・13.3%、障がい者施設では1369万円の予算に対して116万円・8.5%しか執行されませんでした。
 障がい者施設で発生したクラスターについて区が実施した検証結果には、迅速かつ適切にPCR検査を実施するよう指摘されていたにもかかわらず、この教訓は生かさなかった責任は重大です。
 コロナ対策の最前線に立つ保健所も体制強化が強く求められていました。しかし2020年度は、派遣の看護師が最大13人、会計年度任用職員の保健師3人など20人の他、他部署や都からの支援で対応しました。コロナ感染症の教訓は、恒常的な保健所体制の強化です。墨田区などでは、常勤も含めて恒常的な体制強化を進め、第5波では、重傷者を出しませんでした。常勤保健師の拡充など保健所体制強化に背を向けたことは認められません。

 コロナで苦しむ中小業者への支援が強く求められていました。しかし区が実施した支援は、返済が求められる融資の他は、効果もはっきりしないキャッシュレス決済を進めるためのキャンペーン事業に1億7300万円、参加店舗166、利用会員がわずか72人の美味しい渋谷区パスポートに2800万円で、コロナで疲弊した事業者への家賃なのどの固定費直接支援に背を向けたことは許されません。
 介護施設向けの事業継続支援給付金は、6500万円の予算に対して1600万円・執行率24.6%にとどまっており、国の補助の対象外で、減収した事業所すべてに支援を実施すべきでした。

 第2の理由は、負担増や福祉、教育の切り捨てで、区民のくらし、福祉、教育を後退させたことです。
 区独自の区型介護サービスは、介護保険制度では支援できない部分を区民の要望を受けて上乗せし、高齢者の権利を守り、家族の介護負担を軽減するために始まった制度です。しかし、2015年度以降、緊急派遣ヘルパーや外出介助を廃止するなど、年々予算を削減し、2020年度は8063万円、47%も削減しました。
 介護保険の上乗せ事業として、廃止したサービスを復活するとともに、安心して介護が受けられるよう事業を拡充すべきです。
 福祉タクシー券は、月額4600円だった支給額を2015年度から3500円に1100円も引き下げ、毎年予算を減らしてきました。2020年度は、前年度より905万円も減額したうえ、1625万円の不用額を出しています。障がい者の通院などに、なくてはならない制度であるとともに、障がい者の社会参加を保障する制度です。早急に元の4600円に戻すとともに、精神障がい者にも支給すべきです。

 2019年の台風15号によって甚大な被害を受け、使用不能になった新島青少年センターについては、4578万円で解体工事を実施しましたが、突然、区長は方針を転換し、廃止条例を強行しました。大自然の中で、子どもや青少年が親子でふれあい、成長する大切な施設を廃止したことは断じて認められません。
 年度当初から、非常勤職員であった学校図書館専門員を解雇し、派遣に切り替えました。長年、学校と連携した調べもの学習や、子どもに読書の喜びを育んできた職員を解雇したことは、許されません。
 学校図書館専門員は、教育と切り離せない重要な役割を果たしています。派遣に置き換え、中央図書館の所属にしたことは、重大な教育の後退であり認められません。学校図書館法で位置づけられているように、すべての小学校に常勤の学校司書を配置すべきです。

 区は、廃プラスチック等の資源化、家庭ごみ有料化等基礎調査を実施しましたが、区民や議会に何の説明や報告もせず、家庭ごみの有料化についての調査を行ったことは重大です。
 調査に対して区民は、「不法投棄の恐れがある」「基礎的な行政サービスなので税金でやるべき」「経済的負担が増える」など、7割が反対しています。家庭ごみの有料化を既定のものとして進めることは認められません。

 第3の理由は、子育て支援や教育、福祉の拡充を求める区民の声に応えていないことです。
 35人学級について、政府は小学校での段階的実施を決めました。学校での感染拡大を防ぎ、子どものストレスを解消することが緊急に求められており、区内の保護者も署名運動に取り組みましたが、教育委員会がこの声に背を向けたことは許されません。
 この年度は、小学校7クラス、中学校3クラスを増やせば、小中学校全学年での35人学級化が実現できました。子どもたちの安全を守り、一人ひとりに行き届いた教育を実現するために、中学校も含め早急に全学年で35人学級を実施し、30人学級をめざすべきです。
 学校給食は、子どもの食育の場であり、栄養やバランスのとれた食事をとることで、心身共に健やかな成長を育むものです。すでに全国82の自治体が学校給食の無償化を実施しており、義務教育無償の原則に立ち、子育て支援の立場から当区でもすみやかに実施すべきです。
 また、コロナ禍で格差と貧困が広がり、多くの保護者が減収で苦しんでいる時こそ、高校生までの医療費無料化を実施すべきです。

 20年度末の特別養護老人ホーム待機者は393人で、今年10月1日現在430人となっており、増設は待ったなしです。幡ヶ谷2丁目の都営住宅跡地の取得やケアコミュニティ原宿の丘の再整備、代々木2、3丁目の国有地についてもひきつづき活用の可能性を追求し、高齢者が住み慣れた地域で安心して介護を利用できるよう特養ホームの増設を進めるべきです。
 また介護職員の平均月額賃金は、31万5850円で年収では380万円、全労働者の平均年収470万円より約90万円低いのが実態であり、国に対して抜本的な処遇改善を求めるとともに、区として介護職員の賃金の引き上げを行うべきです。

 第4の理由は、大企業のもうけのために、区の職員や財産を提供し、住民福祉の増進を責務とする姿勢を放棄していることです。
 渋谷駅中心五街区整備事業のうち、渋谷駅街区北側自由通路整備事業や南口北側自由通路などに9億2707万円余が支出されましたが、これらの支出は、本来、鉄道事業者や再開発事業者が負担すべきです。
 渋谷駅桜丘口地区に、9億4300万円を投入しました。この事業には総額で80億円の公費投入が予定されていますが、区民や小規模事業者を追い出してすすめる大企業のための再開発に多額の税金を投入しようとしています。
大企業のもうけのための再開発事業には、多額の税金を投入することは許されません。

 渋谷駅周辺整備調整事業として、ステップアップ事業は、区が都と共同して、広大な公有地を使った再開発を誘導する事業です。事業者によって整備される美竹公園を指定管理に移行し、旧渋谷小学校の体育館は、美竹公園の地下に整備するなど、開発事業者の利益優先の土地利用ができるよう便宜を図っています。
 区民の共有財産である区有地は、かつて地域住民が提案要望した特養ホームや保育園など、区民のために使うべきで、美竹公園は区立公園として区が直接整備すべきです。

 新宮下公園については、新宮下公園整備事業の6億5586万円余と、公園維持管理費など、総額で8億3951万円余が執行されました。開設された新宮下公園は、商業施設の付属施設のような公園となり、誰もが自由に使える公園の機能は大きく制約されています。さらに、公園の指定管理者には、三井不動産と西武造園による宮下公園パートナーズが一者応募で選定されましたが、この年度は管理運営でも1517万円の利益を上げました。
 区はこれまで、定期借地料の190億円の値引きなど、三井不動産が利益を上げるための様々な便宜を図ってきました。
 さらに、北谷公園の整備にパークPFIを導入し、恵比寿南一公園でもサッポロ不動産開発などを事業者に選定しました。
区民の財産である公園を営利事業の場に変質させることは認められません。

 官民連携事業として一般社団法人渋谷未来デザインに、この年度1565万円を執行し、設立以来の4年間で1億5798万円が投入されました。渋谷未来デザインは、出資企業に新たな収益事業を提供するために、区民の公共財産を活用した事業展開を掲げていますが、この年度は、渋谷5Gエンタテインメント事業、スマートシティ事業、ササハタハツのまちづくりなどを実施しました。また、予算に計上されていないバーチャル渋谷ハロウィンに1000万円を支出しましたが、議会にも報告しませんでした。区民の税金や職員を民間企業の利益のために差し出しながら、議会にさえ報告しないのは、自治体本来の役割を逸脱した税金投入であり認められません。

 第5の理由は、不要不急のムダ遣いであることです。
 河津さくらの里しぶやには、1億3037万円が執行されましたが、この年度の利用者は5765人で前年度の6割に減っています。運営費では、コロナ感染症による減収補填740万円が追加支援されたため、事業者はコロナ禍でも1410万円の利益を上げました。コロナで苦しむ区内事業者にはわずかな支援しかないのに比べ、あまりに手厚い支援となっていることは明らかです。
 この施設には、これまでに取得など開設前に2億4千万円余、開設後7年間の運営と維持管理に13億3千万円余が投入されてきました。毎年のように多額の費用をかけて運営、改修を続けることは、税金の無駄遣いで認められません。
 帰宅困難者対策として、シブヤ・アロープロジェクトに3071万円余を実行委員会丸投げで支出しています。区民からは、「帰宅困難者が一目見ても、避難場所を示しているとはわからない」との声が寄せられています。目的も役割も明確でないこの事業は、税金のムダ遣いであり、やめるべきです。

 以上、令和2年度渋谷区一般会計歳入歳出決算について、反対の討論とします。

●国保事業会計
 私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題となりました認定第2号、令和2年度国民健康保険事業会計歳入歳出決算について、反対の討論を行います。
 2020年度の国民健康保険料は16年連続で引き上げられました。一人当たりの年間平均保険料は3,168円の負担増となりました。滞納世帯は26%にのぼり、高過ぎて払えない国保料になっていることは明らかです。一般会計からの繰り入れを減らし、区民には生活実態を無視した保険料の値上げを押し付けた決算は認められません。
 また、子どもに対する均等割保険料は、国民健康保険制度にしかない過酷な保険料算定の仕組みであるため、減額する自治体も年々増えています。子どものいる世帯の保険料は、同じ所得の他の医療保険制度と比較しても約2倍になっているだけに渋谷区でも軽減に踏み出すべきです。以上、反対討論といたします。

●介護・後期高齢者医療
 私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題となりました認定第3号、令和2年度介護保険事業会計、認定第4号、同後期高齢者医療事業会計の各歳入歳出決算について、反対の討論を行います。
 介護保険事業会計です。この年度は第7期計画の最終年度で、保険料基準額は年額7万1520円ですが、社会保障の負担増に加え、コロナによる減収で、不足する年金をパートなどで補っている人々の困難が増しました。
 低所得者に対する国の軽減策やコロナにより3割以上所得の減った方には保険料軽減が実施されましたが、ぎりぎりの生活を強いられている高齢者には、耐え難い保険料です。実際、普通徴収の保険料滞納者は、5月末時点で1304人、そのうち44.2%が住民税非課税世帯の第3段階以下で占められており、利用料限度額に対するサービス利用率も前年度を下回っています。区独自の低所得者に対する保険料軽減や利用者負担額助成は、住民税非課税世帯に対象を拡大し、預貯金制限は撤廃すべきです。
 介護予防・日常生活支援総合事業の緩和サービスAは、渋谷区の介護報酬は、訪問介護で約2割、通所介護で約3割も国基準より低く設定されています。このため、緩和サービスの担い手が見つからず、必要な支援が受けられない事例も生まれています。
 そもそも専門職による介護サービスを、介護報酬の削減のために、要支援者を介護給付から外し、無資格者に担わせた緩和サービスAの制度が破綻しているのです。緩和サービスAはやめるべきです。
 高齢者に高い保険料と安上がりの介護給付を押し付けた介護保険事業会計決算は認められません。

 後期高齢者医療事業会計では、2020年度の保険料改定で、低所得者の均等割が4万4100円に800円、賦課限度額は64万円となり2万円引き上げられました。所得割が0.08%引き下げられたため、当区の一人当たりの平均保険料は14万3490円で前年度より若干下がりました。しかし、国の均等割保険料の軽減特例の段階的廃止で、75歳以上の約33%に当たる年金額173万円未満の7,468人の均等割保険料が引き上げられ、2年連続の大幅負担増となりました。低所得の高齢者を狙い撃ちにした保険料引き上げは認められません。
 そもそも、医療費が多くかかる75歳以上の高齢者だけをほかの医療保険からはずし、高い保険料を押しつける制度自体が社会保障の理念に反するものです。この制度は廃止すべきです。

 以上、令和2年度渋谷区介護保険事業会計、同後期高齢者医療事業会計の決算認定に反対する討論とします。

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