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日本共産党渋谷区議会議員団

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議会報告
REPORT

田中正也議員は日本共産党渋谷区議団を代表して、10月19日の決算特別委員会で、2022年度渋谷区一般会計歳入歳出決算、同国民健康保険事業会計歳入歳出決算、同後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算に反対する討論をおこないました。

●2022年度一般会計決算反対討論・決算特別委員会

10.18 田中 正也

 私は日本共産党渋谷区議団を代表して、認定第1号令和4年度渋谷区一般会計歳入歳出決算、認定第2号令和4年度同国民健康保険事業会計歳入歳出決算及び認定第4号令和4年度同後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算に反対の討論を行います。

 2022年度は、新型コロナの第7波、8波で、感染者数も死者数も大きく拡大し、またウクライナ危機による物価の高騰が、区民のいのちとくらしに深刻な影響を与えました。
 渋谷区に求められていたのは、区民のいのちと健康、生活と営業を最優先にして、コロナ対策や物価高騰対策の抜本的強化をはじめ、福祉・教育施策を充実させることでした。
 しかし、長谷部区長の2022年度決算は、コロナ対策も物価高騰対策も極めて不十分で、独自の無料PCR検査センターの増設に背を向け、保健師の増員も2名だけ、区民の生活や営業を直接支援する区独自の施策はほとんどありませんでした。しかも、国保料の大幅値上げや区独自の区型介護サービスを削減する一方、財政調整基金と都市整備基金を合計163億円も積み増しました。さらに、渋谷駅周辺再開発には約35億円もの税金を投入し、ステップアップ事業では区有地を提供するなど大企業の儲けを最優先にしました。また渋谷図書館の現地存続を求める住民の声に背を向け、ファームを中心とした玉川上水旧水路緑道再整備では樹木の大量伐採に着手しました。
 また、河津の保養所など不要不急の事業を継続していることは到底認められません。
 以下、2022年度決算の問題点を各部ごとに指摘します。

[経営企画部]
 官民連携事業として一般社団法人渋谷未来デザインに、事務局職員3人分の共済費298万円を含む1357万円の予算を支出しました。
 渋谷未来デザインは、区が7000万円を拠出し官民共同で設立したもので、区民の公共財産を活用して出資企業に新たな収益事業を提供する団体です。2022年度は、ソーシャルイノベーションウイークに1100万円の委託料を支出し8つの事業を行いましたが、意思決定に区民や議会の関与もなく、各事業の予決算なども「民間の事業だからと」明らかにされません。この事業は自治体本来の役割を逸脱しており認められません。撤退すべきです。
 財政調整基金は、この年度72億円増の837億円、都市整備基金は91億円増の537億円で、基金総額は1374億円となりました。しかも、決算収支では135億2528万円余の不用額を出しました。コロナや物価高騰で苦しむ区民への区独自支援には背を向けて、巨額の税金を積み立てたことは認められません。

[デジタルサービス部]
 スマートシティ推進事業には、渋谷区の様々な情報を官民で利活用するためのシティダッシュボードを整備するためなどに1億1594万3千円を支出。そのうち2023年度に一般社団法人化したスマートシティ推進機構設立のために1350万円を負担しました。
 政府のすすめるスマートシティは、財界・大企業が儲けの場を拡大するためのソサエティ5.0戦略にもとづいて、個人情報を官民で利活用するめたに、プライバシー権の侵害や監視社会に道を開くもので中止すべきです。

[総務部]
 男女平等・多様性社会推進では、相談支援体制を強化するために心理カウンセラーと女性相談支援員を常勤で配置すべきです。また、職員の育休取得率は44.6%で、男性は1カ月以下が多く、女性は9カ月以上が多くなっています。男性でも長期の育児休暇が取得できる環境を整備すべきです。職員の男女の賃金格差は、全体で77.7%、正規で87%、それ以外は69.9%と深刻です。区の委託事業でも調査をおこない、男女の賃金格差を解消すべきです。
 区民から、要配慮個人情報が本人確認なしに、他部署と共有されたとの訴えがありました。個人情報の扱いについては、法令を遵守するとともにガイドラインを整備し、研修を実施すべきです。
 職員研修では、憲法や地方自治法など人権の尊重や全体の奉仕者として役割など公務員として当然身に着けるべき資質の向上のための研修を強化すべきです。

[危機管理対策部]
 帰宅困難者対策として、シブヤ・アロープロジェクトに935万円を支出しますが、2023年度中に、区議会に報告もなくエンワントウキョウ株式会社にプロポーザルで委託することにしました。区民からは、「帰宅困難者が、避難場所を示しているとはわからない」との声が寄せられています。いのちを守ることが最優先にされるべき災害時の備えに、わかりにくい矢印を製作するために巨額の税金を投入することは認められません。この事業は、税金のムダ遣いであり、やめるべきです。

[区民部]
●河津さくらの里しぶやには補正予算が組まれ、当初予算を上回る1億2294万円余が執行されました。コロナの影響があったとはいえ、施設利用は、4泊目の料金が無料になる湯治プラン216人のほか、小学校の移動教室をあわせても、利用率は68・5%で、1日平均24人にすぎません。区は、大型バスが入れるようにと隣接地の鑑定評価のための予算を計上しましたが、さらなる検討が必要だとして執行しませんでした。こうした施設にさらに経費をつぎ込み事業を拡大することは認められません。区民ニーズが乏しいこの施設に区は、取得など開設前に2億4千万円余、開設後の9年間の運営と維持管理に16億7千万円余を投入してきました。毎年のように多額の費用をかけて運営、改修を続けることは、税金の無駄遣いです。

[産業観光文化部]
●グローバル拠点都市推進事業には、前年度の3倍近い2億5171万円余が投入されました。この事業の中心的役割を担う渋谷スタートアップデックの運営資金は、この年度、民間の幹事会員10社の拠出金合計300万円のほかは、渋谷区が4963万円余とそのほとんどをつぎ込んでいるのが実態であり、渋谷区丸抱えの事業です。
 また、海外にむけたPR事業に2278万円余、スタータップビザのワンストップサービス受付窓口に2538万円余、日本と海外のスタートアップコミュニティ活性化に1830万円余などに多くの予算を使っていることからも、中心的な狙いが海外スタートアップの誘致にあることは明らかです。このほかに、補正予算で計上したスタートアップ支援のための株式会社設立の資本金として7000万円の投入や、デックの拠点を含む、オフィス拠点の賃借料に3605万円が支出されました。
 区の課題解決に寄与するとしていながら、その具体的な見通しも明らかにされていない事業に多額の税金を投入することは区民の理解を得られるものではありません。

〔都市整備部〕
●この年度は3回の区営住宅空き家募集が行われましたが、応募倍率は最大で単身高齢者が61倍、世帯が53倍で、前年度以上の倍率となり、高齢者の住宅確保が切実に求められています。早急に区営住宅の増設計画を示すべきです。区は借り上げ高齢者住宅の借り上げ契約を終了しようとしていますが認められません。契約は更新して空き家募集を行うべきです。

[まちづくり推進部]
●市街地再開発事業として、渋谷駅桜丘口地区に27億8600万円が投入されました。また、渋谷駅中心五街区整備事業には、渋谷駅街区北側自由通路整備事業として5億6千万円、渋谷駅南口北側自由通路整備事業に1億5200万円が予算通りに執行されました。これらの事業費は、鉄道事業者や再開発事業者が負担すべきものであり、区民の税金投入は認められません。

●渋谷駅周辺整備調整事業として、渋谷駅東地区まちづくり支援、神南二丁目宇田川町地区まちづくり支援など、全体で1億743万円余が支出されました。
 区は渋谷駅周辺の再開発の連鎖によるまちづくりを進めていますが、渋谷駅東口地区まちづくりは、宮益坂地区に180mの業務ビルを建てるための市街地再開発事業に伴うものであり、神南二丁目宇田川町地区まちづくりは、区役所のメインエントランスにつうじる区道を廃止し、神南小学校の容積率を利用して150mの超高層マンションを建てる市街地再開発事業によるものです。
 二つの市街地再開発事業に対しては、地権者や近隣住民をはじめ、反対の声も上がっています。大企業の利益のための大規模開発や区有地・小学校の容積率を差し出すことはきっぱりやめるべきです。

〔土木部〕
●新宮下公園の関連では、公園維持管理費として三井不動産などへの指定管理料1億3540万円余など、合計1億8294万円余が支出されました。旧渋谷川遊歩道の東京都下水道局の土地は、東京都から公園用地として減免されているのに、実態は指定管理者の自主事業として恒常的に居酒屋の客席に使わせていることは、指定管理者(宮下公園パートナーズ=三井不動産+西部造園)の利益のために区が又貸しをして便宜を図るもので認められません。
 この年度の指定管理者の収支は、3億745万円余の収入に対し、2億8303万円余の支出で、2442万円の利益を上げています。
 新宮下公園は、商業施設屋上の4階に作られた付属施設のような公園となり、公園としての機能は大きく後退しました。この年度までに北谷公園と恵比寿南一公園がパークPFI手法で整備し指定管理されていますが、公園用地を民間に利活用させる公園整備の手法は、事業者の利益のために区政をゆがめるものでやめるべきです。

●玉川上水旧水路緑道設計委託として、東京ランドスケープ研究所に2億3138万円余が執行されていますが、その中には、田根氏への再委託として1億5800万円、農園の委託料としてプランティオに1400万円の再委託料のほか、住民合意形成の広報に2330万円、パークPFI検討のための公募支援業務委託540万円などが含まれています。
 また、この他に都市計画道路の見直し検討委託に878万円余、電線の無電柱化の試掘に8438万円余、予備設計に241万円余、15本の樹木伐採に601万円余が執行され、この年度までに緑道整備にかけた費用は累計で約7億7千万円にも上り、さらに今後5年間で100億円もの税金を投入しようとしています。
 住民の樹木の伐採に反対し、緑を守ってほしいという願いが請願として区民環境委員会で採択されました。区は、住民の意向を尊重し、現在の計画は白紙に戻し、再検討すべきです。

〔環境政策部〕
●環境基本計画2018の中間見直しに1177万円が執行されましたが、2030年までのCO2削減目標は、世界の足を引っ張ると批判されている国の低い目標を横引きして46%のままです。23区で唯一、2050年ゼロカーボン宣言も行わないなど、気候危機対策に後ろ向きな姿勢は許されません。
 区庁舎の消費電力の内、主たる契約者の㈱エネツトの再生可能エネルギー比率はわずか2%にとどまっています。気候危機打開の先頭に立つべき区庁舎の再エネ比率は他の区有施設とともに、早急に再エネ100%にすべきです。また、大規模事業者に一層の排出抑制を求め、大型開発の規制、区民や中小事業者への補助事業を実施するなど、区が率先して気候危機打開に取り組むべきです。

[スポーツ部]
 地域スポーツ活動活性化事業費として渋谷ユナイテッドには、人件費4人分1908万円を含む助成金として5293万円余を支出し、さらに児童・生徒指導として現在学校で行っていない中学生の部活動10種目の指導費3120万円を支出していますが、部員数は累計で238人です。中学生の部活動に、自己負担を求めていることは見直すべきです。また、中学校部活の地域移行については、教育委員会が主体となって教員・子どもたち・保護者の意見を聞き丁寧に行うべきです。

[生涯活躍部]
 渋谷図書館は住民と利用者の反対を押し切って閉館しましたが、区民は一日も早く渋谷図書館の再開を求めています。白根郷土博物館の貸し出しスポットの利用者は、1日平均28人、年間7,671人にとどまっており、渋谷図書館の2020年の1日平均281人、年間82,716人の10分の1以下となっています。耐震強度が十分な渋谷図書館のリニューアル工事を直ちに行い、区民と利用者の要望を実現すべきです。

[子ども家庭部]
 22年度認可保育園の入所を希望しても入れなかった子どもの数は359人に上っていましたが、今年4月に開設した認可保育園は36人定数の小規模園1ヶ所だけでした。その結果今年度認可園を希望しても入れなかった子どもは、ゼロ歳児91人、1歳児184人、2歳児41人など依然として深刻な実態となっています。にもかかわらず、区は今年3月区のホームぺージに新たな認可保育園の開設募集はしないことを発表したことは、保育の必要な子どもに対する区の責務を放棄するものであり認められません。認可保育園を希望するすべての子どもたちが入所できるよう、杉並区のように、認証保育所から認可保育園への変更を希望する施設を支援することも含め、認可保育園を増設すべきです。

[教育委員会]
 22年度の渋谷区の不登校の児童・生徒は294人、いじめ件数は、430件でそのうち年度末までに295件が解消したとの報告がありました。文科省が公表した不登校の小中学生は、29万9048人、一方、いじめ認知件数は、68万1948件、「重大事態」は前年より217件増の923件で過去最高となっていますが、不登校の理由として「いじめ」は0.3%です。報道では、有識者や支援団体から「実態とかけ離れている」との指摘をうけ、文科省は、「一人一人の児童生徒が不登校になった要因を分析・把握できるよう23年度の調査では方法の見直しを検討している」とのことです。不登校やいじめを訴えている一人一人の子どもたちが安心して通える学校になっているのか?子どもたちに何が起きているのか、どうしたいと思っているのか、子どもに寄り添っていくために教育委員会と学校が一体となって対応することが必要です。
 そのためにも教師の負担を減らし、子どもたちが1日のうち最も長く過ごす学校生活に丸ごと寄り添えるよう教員を増員し、少人数学級を実現すべきです。
 小中学校の女子トイレに生理用品を配備することについては、トイレにおいてある学校と保健室にもらいに行く学校で約2倍の差があることが明らかになりました。この結果を各学校に伝えすべての学校で必要な子どもたちが必要な時に気兼ねなく利用できるよう直ちに改善すべきです。
 子育て世帯の貧困が深刻になるなかで、学校給食の無償化や就学援助の拡大に背を向けたことも認められません。

[国民健康保険事業会計]
 つぎに国民健康保険事業会計についてです。
 2022年度の国民健康保険料は18年連続で引き上げられました。医療分の均等割が3300円引き上げられたことが影響し、一人当たりの年間保険料は、18万5110円で、7086円の大幅値上げとなりました。年収400万円の40代夫婦と学齢期の子ども2人の世帯では7041円の値上げで52万6311円となり、収入の13%を占め、協会けんぽとの格差は2・3倍に広がりました。滞納世帯率は19・72%で短期証は236世帯340人、また資格証発行は9世帯9人に対し給付制限が行われ、差し押さえ件数は61件となりました。一方で、一般会計からのその他繰入は保険料収納率が上がったことなどから、予算で見込んだ10億6971万9千円に対し、5億3234万9千円に減りました。医療保険制度間の保険料格差は、国の制度設計によるものであり、国の国保への負担を抜本的に増やすよう求めるべきです。また、区として保険料の軽減のために予算化した納付金分の一般会計からの繰り入れについては、予算の全額を活用すべきです。
 この年度から、未就学児の子どもの均等割保険料が半額に軽減されました。渋谷区では1573人の子どもが対象となりましたが、軽減額は2041万円余にすぎません。他の医療保険制度にはない人頭割の保険料であるだけに、対象年齢を18歳までに引き上げ、均等割保険料は無料に拡充すべきです。
 高い保険料を押し付け、払えなければ延滞金や給付制限を課して厳しく取り立てた決算は認められません。

[後期高齢者医療事業会計]
 つぎに後期高齢者医療事業会計についてです。
 2022年度の保険料率は、均等割が2300円、所得割が0・77%、賦課限度額が2万円、それぞれ引き上げられた結果、一人当たりの平均保険料は15万6784円となり、前年度より8650円の大幅な値上げになりました。
また、年度途中の10月から窓口負担が1割だった1万6820人のうち、27%に当たる4631人が2割負担にされ、医療にかかりにくくなりました。
 高齢者に高い保険料負担を押し付ける一方で、給付を縮小して窓口負担を重くした決算は認められません。
 今後団塊世代が75歳になって急速に給付が増えていくことが予想され、ますます保険料の値上げが苛酷になっていきます。医療費が多くかかる75歳以上の高齢者だけを、ほかの医療保険から切り離して強制的に囲い込む制度は、社会保障の理念に反するもので、一刻も早くこの制度を廃止して元の老人医療制度に戻し、国や都の負担を増やして、高齢者が安心してかかれる医療保険制度を構築すべきです。
 以上、反対する討論とします。

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