●第4回定例会 一般質問 本番用
2024.11.28 田中正也
私は、日本共産党区議団として、区長に質問します。
1.高齢者福祉と介護保険について
(1)第9期渋谷区高齢者保健福祉計画と介護保険事業計画について
2024年度から3年間の第9期渋谷区高齢者保健福祉計画と同介護保険事業計画は、10月に「素案」が公表され、12月から4カ所での住民説明会とパブリックコメントが実施されます。
渋谷区の地域包括支援センターは、「下駄ばきで相談できるところに」との住民の声で、11カ所に増設されました。住民や高齢者の声を計画に生かすために、地域包括支援センターごとに説明会を開催すべきです。また「素案」には介護保険料の案は示されていません。介護保険料の案を示した後に、改めて住民説明会とパブリックコメントを行うべきです。区長の所見を伺います。
(2)介護保険改悪の撤回と公費負担の拡大を
厚生労働省は、第9期の介護保険サービス利用料を、単身で収入220万円~260万円の場合、2割に引上げようとしています。220万円になれば、渋谷区では4300人以上の窓口負担が2倍に引き上げられることになります。さらに65歳以上の保険料引き上げ、介護老人保健施設などの多床室室料の全額自己負担化まで検討しています。
年金給付はこの10年間で実質7.3%も減額され、そのうえ物価高騰が直撃して、高齢者のくらしは悪化する一方です。住民からは「いまでも生活費を削っているのに、介護サービスを受けたくても利用できない」との声が寄せられています。介護保険料や利用料を値上げすれば、滞納による給付制限や深刻なサービス利用控えが増加し、「保険あって介護なし」の介護崩壊になりかねません。
政府に対して、国の負担を拡大し、サービス利用料や介護保険料などの負担増の撤回を求めるべきです。区の介護保険料の減額のために活用できる介護保険支払準備基金は23億円あり、保険料を据え置いた第8期の同時期の14億円を大きく上回っています。第9期の介護保険料基準額を据え置くとともに、区独自の減額制度については、収入基準額を引き上げ預貯金制限は撤廃すべきです。また介護サービス等利用者負担額助成は、住民税非課税者にまで拡大し、預貯金制限を撤廃すべきです。区長に所見を伺います。
(3)介護職員の処遇改善を
介護職員の賃金は、全産業平均と比べて依然として月7万円も低いのが実態です。政府が、補正予算で示した6000円の引き上げ案に対して、関係者から「一桁違う」と厳しい批判が寄せられています。
渋谷区の介護事業所調査では、67.2%が「介護職員が不足している」と回答しており、その原因は低賃金と劣悪な労働条件にあることは明らかです。
区内のある特養老人ホームでは、各フロアに必要な介護職員は昼間1人不足し、夜勤もワンオペ状態です。9月から11月で4人が退職するのに新規採用は2人しか決まっていません。この特養の職員は、「子どもがいるのに、土日の出勤や連続夜勤、早出残業も常態化しており、これでは、働き続けることも難しい」と訴えています。
訪問ヘルパーの処遇はさらに深刻です。区内のヘルパーさんは、「利用時間が45分に減らされ、介護報酬の対象外の移動時間や事務処理時間が増えて、結果的に最低賃金以下で働かざるを得ない」と訴えています。
区長は、こうした実態について、どう考えているのか伺います。国に対して、国庫負担割合を増やし、保険料を上げずに介護職員の賃金を専門職にふさわしく引き上げ、訪問ヘルパーの移動時間や事務処理時間も報酬に含めるよう求めるべきです。また、区として、介護従事者の賃上げのための助成を実施すべきです。所見を伺います。
(4)地域包括支援センターの体制強化
地域包括支援センターは、身近な相談窓口・支援拠点としての役割に加え、重層的支援体制として、経済的困難者、障がいなどの困難への対応も求められています。しかし、重層的支援体制を担う職員は増員されず、これまでの職員が研修を受けて対応しており、地域包括支援センターは、ますます大変になっています。
職員を増員するとともに、重層的支援担当者を専任化して、常勤職員を配置すべきです。区長の所見を伺います。
重層的支援体制で、地域福祉コーディネーターを4つの日常生活圏域に2人、計13人配置し、必要な相談者へのアウトリーチ・伴走型支援を開始したことは大きな前進ですが、相談に来ない人、来られない人には支援が届きません。
区として、困難を抱えているのに相談や支援に結びついていない高齢者に行き届く支援をどう考えているのか、区長に伺います。港区は、介護・高齢者福祉サービスを利用していない高齢者世帯を専門職員が訪問して、必要な支援につなげる「ふれあい相談員」制度を実施しています。本区での実施を何度も提案していますが、その効果について区としてどのように調査検討したのか、伺います。だれひとり取り残さない施策の要として実施すべきです。区長の所見を伺います。
(5)認知症施策について
認知症は85歳以上で55.5%といわれており、渋谷区の場合4800人以上と推計されます。今年6月に成立した「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」は「全ての認知症の人が、基本的人権を享受できる個人」として尊重されるよう、国や自治体に「認知症の人と家族の意見を聞き」、認知症施策推進計画の策定を求めています。
①「素案」でも認知症施策推進計画を策定するとしていますが、どのように本人と家族の意見を聴き、政策に反映させる仕組みを考えているのか、区長に伺います。
わが党区議団は、「認知症の人と家族にやさしいまちしぶや条例」を提案しており、区の責務として「認知症施策の実施に当たり、常に本人の視点に立ち、本人及びその家族の意見を聴かなければならない」と規定しました。区民全体で、「一人ひとりの希望及び権利が尊重され、ともに安心して自分らしく暮らせるまち」をめざすためにも、認知症条例を制定すべきです。
②認知症の早期発見、早期支援のためには、すべての高齢者を視野に入れた対策が重要です。昨年度の認知症健診は、65才、70才、75才の6000人にセルフチェックシートを送付していますが89人の利用にとどまっています。送付対象に80才と85才を加えるとともに、医師会等にも協力をお願いして、医療機関に配布するなど対象を大幅に拡大すべきです。合わせて、区長の所見を伺います。
③認知症の本人や家族に寄り添い、継続的に支援するための認知症地域支援推進員は現在、日常生活圏域に1人で区内に4人です。身近な場所でいつでも相談・支援できるように、すべての地域包括支援センターに配置すべきです。
認知症の人は重症でも介護度は軽度で認定されるケースがほとんどです。様々な認知症状に家族や支援者だけで対応することは困難であり、認知症グループホームの増設は待ったなしです。本町1丁目の警察寮跡地なども活用して増設すべきです。区長の所見を伺います。
④特養老人ホームの増設
特別養護老人ホームの待機者は、今年10月で328人、そのうち要介護4・5の人が193人、59%と重度になってもなかなか入所できない事態が続いています。ところが、「素案」の増設計画は、神宮前の民間特養1か所だけです。しかも、けやきの苑の大規模改修による入所者の受け皿として想定しており、次期計画の3年間では待機者を減らせません。
地域の高齢者は、「夫は特養に入れず、やむなく八王子のサービス付き高齢者住宅に入り、結局そのまま亡くなった。せめて、身近な特養に入れてあげたかった」と訴えています。
少なくとも重度や在宅での支援が困難な待機者をなくす規模での特養ホームの増設計画にすべきです。区長の所見を伺います。
代々木2・3丁目の国有地については、特養ホームの整備を目的に借地をする場合、国は借地料を50%減額する制度を実施しています。地域住民は、早期に取得し、特養ホームやファミリー住宅の整備などを求めています。区長は、この間国とどのような話し合いをしてきたのか、経過の説明を求めます。早期に、活用できるよう交渉すべきです。所見を伺います。
また、幡ヶ谷2丁目の都営原町住宅跡地について、東京都住宅局は水道道路沿道の都営住宅の建替えの受け皿として都営住宅を整備する考えであり、低層階を渋谷区が福祉施設として活用することも可能としています。特別養護老人ホーム等の福祉施設が整備できるよう東京都と交渉すべきです。区長の所見を伺います。
(6)敬老祝い金について
区長は、敬老祝い金について「金額や対象年齢を改める」と表明しました。敬老祝い金事業の目的は、「75歳以上の長寿と健康を祝い、敬老の意を表して」実施してきたもので、「ささやかだが外食していた」「孫にプレゼントを買っていた」など、少ない年金のなかで高齢者の喜びであり、区民としての誇りです。この間のカタログ配布に対しては、現金に戻してほしいとの強い要望が出されていました。
従来通り75歳以上に1万円の現金給付を継続すべきです。区長の所見を伺います。
2.ジェンダー平等について
日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と世界でも圧倒的に遅れた国になっています。渋谷区もジェンダーギャップを克服する先頭に立つことが求められます。
(1)「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」について
区は、「日本国憲法で定める基本的人権の尊重の理念に則り、人間らしく生きるために必要な権利を尊重するため」、現行条例を「包括的な人権尊重条例」へと改正し、新たに「多様性を尊重する社会を推進する条例」を制定しようとしています。
「包括的な人権擁護条例」のジェンダー平等の促進、パートナーシップ証明の見直し、ヘイトの禁止、職員の行動指針の策定や情報の保障などは重要ですが、さらにパートナーシップ証明については、足立区などで実施しているファミリーシップ証明を取り入れるべきです。また、区外に在住する区職員は、区のパートナーシップ証明を受けなければ、休日・休暇や給与などについて法定婚と同等の権利が認められません。他の自治体のパートナーシップ宣誓を受けている場合、法定婚と同等の権利を認めるべきです。区長の所見を伺います。
また、人権尊重を土台とした包括的な性について、早くから学べるよう、幼稚園、保育園、小中学校での出前講座の回数を増やすとともに、区民が参加できる講座を実施し、区内事業者への啓発事業を強化すべきです。区長の所見を伺います。
一方、「多様性を尊重する社会を推進する条例」の「基本理念」には、「自らの個性を発揮することにより、渋谷を社会・文化・経済その他様々な分野で発展し続けるまちにしていく」という文言があります。包括的な人権尊重の立場では、どんな個人も「あるがままに尊重される」ことが重要です。
渋谷区の発展との関係で個人が評価される誤解を招く表現は避けて、「社会・文化・経済その他様々な分野で、個性の発揮が尊重される」と改めるべきと考えます。区長の所見を伺います。
(2)男女賃金格差是正について
経済分野のジェンダーギャップ指数の順位は123位で改善されていません。
本区の職員の場合、2022年度の職員の男女の賃金格差は、全体で77.7%、正規で87%、それ以外は69.9%と深刻です。その原因のひとつは、保育園などに多い短期の会計年度任用職員の賃金水準が低いことです。
会計年度任用職員の正規雇用化をすすめるとともに、賃金の抜本的引き上げについて区長会はじめ関係機関に働きかけるべきです。また、公務労働の賃金格差を是正するために、区の委託事業の賃金調査をおこない、必要な財政措置を行うべきです。
区が企業・団体と締結するパートナーシップ協定の協定書に、男女賃金格差を公表し、是正に努めることを求めるべきです。区長の所見を伺います。
3.障がい者福祉施策について
(1)障がい者福祉サービスの切れ間のない支援を
日本が、障がい者権利条約を批准して10年、その具体化である「総合福祉部会の骨格提言」から12年が経ちますが、政府はいまだに、「提言」を実施していません。
提言の重要な柱である障がい者福祉サービスの「応益負担」を廃止し、障害程度区分認定はやめて障がい者の実態に合ったサービスを提供できるよう「障害者総合福祉法」の制定を国に求めるべきです。区として、子どもの利用者負担を無料にすべきです。
また、65歳を超えた障がい者に、介護保険サービスを優先する国の通知については、違法の判決が出されています。区として自己負担なしで継続してサービスが受けられるようにすべきです。3点について、区長の所見を伺います。
(2)視覚障がい者の情報のバリアフリー化について
区内の視覚障がい者から、「スマートフォンを使いたいが、スマホを使うための補助装置であるリボ2(RIVO2)は高額で買えない。近隣区では補助があるが渋谷区では対象になっていない」との声が寄せられました。すでに、23区では13区が補助を実施しており、港区などでは日常生活支援用具として10万円補助しています。
リボ2も、日常生活支援用具に加えて、港区並みに補助すべきです。区長の所見を伺います。
以上