最高裁判決に従い生活保護制度の充実を求める意見書を国会・政府に提出することを求める請願 賛成討論
2025.10.16 牛尾
私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題となりました、最高裁判決に従い生活保護制度の充実を求める意見書を国会・政府に提出することを求める請願について、採択に賛成する討論を行います。
本請願は、最高裁判所が本年6月27日に下した、国が2013年から行った生活保護基準の引き下げは違法であるとする判決に従って、一刻も早く、引き下げ前の基準に戻すなどの行政上の措置をとるよう、国に意見書を提出すことを求めるものです。
請願の採択に賛成する第一の理由は、最高裁が違法と判断した生活保護基準のもとに、渋谷区だけでも2500近い世帯に2700人の受給者の方々が置かれ、日々の暮らしの困難を強いられているからです。
国のおこなった生活保護の生活扶助基準の引き下げは、平均6.5%、最大10%にも及んでおり、その影響は12年間続いています。さらに現在の物価高騰や猛暑による生活費の増加はこれに拍車をかけています。最高裁が違法の根拠とした生活保護法第3条は、「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と規定しているにもかかわらず、違法状態をさらに伸ばすことは許されません。
実際、被保護者の生活実態は、とても健康で文化的な最低生活を満たすとは言えないものとなっています。
裁判を原告としてたたかった受給者の方々は、「物価高の中で食費をどう切り詰めるか、猛暑の中でエアコンの電気代をいかに少なくするかを考えながら生活している」「生活保護基準が引き下げられる前は、インスタントラーメンにもやしや豚小間などを入れるようなものではありますが、1日2食は食べられましたが、生活保護基準が引き下げられてから、食事は1日1食になりました。米が高騰して、食べる米の量についても、一回に炊くのを3合から1.5合に減らしました」「施設にいた母親に月4回面会していたのが、引下げ後は往復の交通費を節約するために、月2回に減らさざるを得なくなった」などと訴えています。
区内には、声を上げられないまま、こうした生活を余儀なくされている方々が多数おられるのです。すでに1000人を超える原告のうち、232人が亡くなっています。こうした状態を一刻も早く解消するためにも、渋谷区議会として国に意見書を提出すべきです。
第二の賛成理由は、保護基準の引き下げは違法とする最高裁判決が下されてもなお、政府は、まったく反省することもなくこれまでの立場を変えようとしていないからです。
判決が言い渡されてから、既に3カ月半以上が経っていますが、いまだに政府は、原告に謝罪も補償も行っていません。
厚生労働省が行ったのは、社会保障審議会生活保護部会の中に、「最高裁判決への対応に関する専門委員会」を設置し、そこに、生活保護基準の改定の検証だけでなく、謝罪や補償に至る政府の対応を全て委ねることでした。これは、判決に従おうとしない政府の姿勢を端的に示すもので、憲法で定められた三権分立の原則さえ踏みにじる許されない態度と言わなければなりません。
生活保護基準をめぐって争われた朝日訴訟では、東京地裁で原告勝利の判決が下されましたが、政府は、裁判上では争いながらも、訴えの内容に真剣に向き合い、保護基準のあり方について内部で議論し、1960年10月19日の地裁判決が出される前の1960年8月に保護基準の計算方式を根本的に変更し、生活扶助基準を26%増額することを決定し、予算要求を行いました。
生活保護基準の引き下げ処分を違法としたのは、日本の最高裁判決では史上初めてです。さらに処分の取り消しを命じて被害の回復を課題にしています。政府がまず行うべきは、判決に従って、原告をはじめ被害を受けた保護受給者にまず謝罪し、引き下げによって受けた被害を補償し、保護基準を引き下げ以前の水準に戻すことです。
区民福祉委員会の委員長からは、本請願に反対の立場から、国の専門委員会の進捗を見守る段階であるため、現時点で判断することは難しいとの意見があったことが報告されました。
しかし、原告らは、国の専門委員会の正当性についても強い疑問を持っています。そもそも、専門委員は敗訴した政府の一方的な人選によって構成され、政府が用意した資料と説明だけで議論が進められようとしています。第2回委員会で、原告の発言の機会が与えられましたが、発言後には退席させられました。今後も審議の経過を聞いた上で、意見を述べたり、資料を出したりすることすら認められていません。
こんな不公平な仕組み・運用で、公正・公平な判断ができるはずがないと感じるのは、当然ではないでしょうか。
実際、10月2日に開かれた第5回専門委員会には、「デフレ調整」で物価下落率を大きく見せた物価偽装の指標である「生活扶助相当CPI」を改めて提示したため、各委員からは「使わないほうがいい」「考えなくていい」など、論点から外す発言が相次ぎました。また、厚労省は、世界的に物価高騰となった2008年を起点にして、翌年度以降の低所得世帯と生活保護利用世帯の消費の落ち込みを比較して再処分する案を示したため、判決が取り消しを命じた処分をさらに下まわる保護基準になる案が示されました。
渋谷区議会には、このような専門委員会の判断を待つことなくこの請願を採択し、現段階ですでに確定している判決こそ、今後の行政の指針とすることを求めることが、当議会の取るべき態度だということを強く主張し、請願への賛成討論とします。
生活保護法(抄)
(最低生活)
第3条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。
(基準及び程度の原則)
第8条 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
2 前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。
「デフレ調整」で物価下落率を大きく見せた物価偽装の指標である「生活扶助相当CPI」を改めて提示したため、各委員からは「使わないほうがいい」「考えなくていい」など、論点から外す発言が相次ぎました。また、厚労省は、世界的に物価高騰となった2008年を起点にして、翌年度以降の低所得世帯と生活保護利用世帯の消費の落ち込みを比較して再処分する案を示したため、判決が取り消しを命じた処分をさらに下まっわる保護基準になる案が示されました。
安倍政権が強行した、3年間で最大10%の史上最大の生活保護費削減に対し、全国で1万371世帯が不服審査請求し、1027人の原告が31の訴訟を提起して、「いのちのとりで裁判」がたたかわれました。6月27日、最高裁は、生活保護費の大幅な引き下げは憲法25条の生存権に反するとした原告の主張を認め、保護基準引き下げを「違法」とする統一判断を示しました。この判決は、憲法25条をめぐる裁判で初めて原告が勝利した判決であり、生活保護はもとより、今後、社会保障制度を守り前進させる礎にもなる画期的な意義をもつものです。
区長は国に対し、速やかに原告に謝罪し、基準額を元に戻すとともに、減額分の補償を求めるべきです。
一つは生活保護世帯の消費実態を低所得者のなかでも最下位の所得階層(第1・十分位)と比較している点です。この層には様々な理由で生活保護基準以下の生活を余儀なくされている世帯が多数含まれています。また、長引く不況や格差が拡大するなかで、低所得者層の生活はさらなる地盤沈下をおこしており、第1・十分位層に合わせれば、生活扶助基準が引き下げられるのは当然です。
●年間生活扶助費削減額 2013年当時 年間450億円(うち年末一時金70億円)
※12年間で5400億円
●渋谷区の生活扶助費の削減額は、2024年度決算ベースでの試算で、1億1826万円
生活扶助費の決め方
生活扶助費の決め方は以下の通りです
これらの要素を考慮して、生活扶助費が決まります。