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日本共産党渋谷区議会議員団

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議会報告
REPORT

いがらし千代子議員は10月16日の本会議で、2024年度渋谷区一般会計歳入歳出決算、同国民健康保険事業会計歳入歳出決算、同介護保険事業会計歳入歳出決算、同後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算について、日本共産党渋谷区議団を代表して、反対討論をおこないました。

2024(R6)年度 決算反対討論

25.10/16 五十嵐

 私は日本共産党渋谷区議団を代表してただいま議題となりました認定第一号令和6年度渋谷区一般会計歳入歳出決算に反対の立場から討論します。

 2024年度は、3年続く物価高騰により、区民生活も中小事業者の営業も一層厳しさを増した年でした。都内の倒産件数は、1782件で前年比11.6%増となり3年連続で前年を上回る実態で、区民と中小事業者からは物価対策をはじめ、くらしと営業を支える対策と福祉・教育の拡充が求められました。
 しかし、渋谷区は、渋谷駅周辺再開発や区民無視の玉川上水旧水路緑道再整備などに多額の税金を支出する一方、国保料・介護保険料・後期高齢者医療保険料のトリプル値上げと奨学金制度の廃止など、福祉、教育の切り捨てを行った決算は認められません。以下反対理由を述べます。

  第1に、物価高騰から区民のくらしと命、中小業者の営業を守る対策が不十分だからです。

 実質賃金も年金も連続マイナスになる中、24年の10月にはコメの価格が前年比57%も値上がりし、2人世帯で年間28万円もの負担増となりました。わが党のくらしのアンケートには区民の7割以上の人が「くらしが苦しい」と訴えていました。また、商店と中小事業者の営業は、燃料や原材料費の値上げに加えインボイス制度の平年度化で、売上げが減っても通年で消費税の納税が課せられ、深刻さが一層増しています。区民からは区独自の物価対策助成金や地域商店街等でも使える紙の商品券等の要望と中小事業者からは営業を圧迫している光熱費等への助成金等が求められましたが、区の対策はハチペイと制度融資だけでした。決算でもハチペイのユーザーは54,422人、利用できる店は4,464店舗に限られており、区民の23%の利用で、スマホを使わない多くの高齢者や商店を切り捨てたことは認められません。

 区として実現可能な賃金引上げに背を向けていることは重大です。
 公契約条例の対象工事を、5000万円以上に拡大し、労働報酬下限額を抜本的に引き上げるとともに、条例の適用対象を全ての委託契約と指定管理協定に拡大すべきです。
 2024年度の男女賃金格差は、男性を100とした場合女性の常勤が88.3%、会計年度任用職員が、80.7%でした。常勤の格差は上位の職層が多いため会計任用職員は保育士や保健師が9割以上となっており、管理職の負担軽減でワークライフバランスを確保することや会計任用職員の賃金を引き上げ、格差を解消すべきです。
 物価高騰対策等の施策を実現する財源は十分にあります。決算での使い残しは、138億円、3月末の基金総額は1,625億円になっています。これを活用して物価対策等を速やかに実施すべきです。

  第2に、区民に負担増を押し付け、福祉、教育を切り捨て区民の願いに背を向けているからです。

 24年度は国民健康保険料が平均17,311円、介護保険料基準額が2,520円、後期高齢者医療保険料が6,514円値上げし、物価高騰で苦しむ区民
 に追い打ちをかけた保険料値上げの決算は認められません。

 敬老祝い金は24年度大幅な削減がおこなわれ、23年度の支給者23,964人から8,791人の37%に削減し、決算額も1億1,497万円の前年度の48%に削減されました。同時に88歳の人に贈呈していた祝い品も敬老金に統合しましたが昨年3月に88歳になった方は、敬老の日前後に2万円の支給をまっていましたが届かなかったため区役所に問い合わせると、今支給されなかった人は来年支給されるといわれ、今年楽しみにしていたそうですが今年も届かずまた問い合わせると、9月に89歳になっているのでダメですと言われた、「祝い金をもらったらお米を買おうと思っていたのに」と怒りの声を上げていました。高齢者が支えにしていた敬老金を削減したことは認められません。

 給付制の奨学金は、足立区、品川区、港区が大学生等の入学金と授業料まで対象を拡大して実施に踏み出しています。足立区は理工系で最大826万円、私立の医科系で3,594万円まで支給、品川区は所得制限なしで各大学の授業料相当分を支給します。しかし渋谷区は、各区の努力に逆行して奨学金貸付制度を廃止しました。24年度には、給付制奨学金に使うようにと目的を定めた寄付金が2億1231万円も区民から寄せられましたが、議会にも知らせず、寄付者の意志を踏みにじって奨学金制度を廃止したことは許されません。直ちに給付制奨学金を創設すべきです。

 保育園の4・5歳児の定員割れが区立、私立を問わず増えています。4・5歳児の保育士配置基準が見直され25人に1人になりましたが、まだ欧米の基準と比べると保育士の数が足りません。子どもたち一人一人に寄り添った保育ができるよう現在の保育士一人に対する子どもの数をさらに減らすよう国に求めるとともに、渋谷区独自で見直しをしなかったことは認められません。
 保育士の平均月給は27万7,200円であり、全産業の平均月給の35万9,600円と比較して8万円も低くなっています。保育士の処遇改善として国に対し、保育士の人件費の引き上げを求めるとともに、区独自にも民間保育士の給与引き上げのための支援を実施すべきでした。また、私立保育園の法外援護として東京都の助成に区が上乗せしている宿舎借り上げ助成制度については、区内在住の要件を都内居住に広げるとともに、単身者だけでなく世帯にも支援し、長く保育園で働くことができるように改善すべきです。

 区営住宅空き家募集が3回行われましたが、平均応募倍率は高齢者向けの単身が19倍で、世帯用は募集がありませんでした。所得の少ない高齢者むけの住宅確保は区政の重要な施策であるにもかかわらず、区は民間住宅への入居支援にシフトしたなどとして、区営住宅の増設計画を立てようともしませんでした。そればかりか本町と笹塚の借り上げ高齢者住宅を廃止するために、22戸あった福祉人材住宅を7戸に減らしました。区内で公営住宅が不足していることは、申し込み状況からみても明らかで区営住宅の増設計画を立てるべきです。
 住替え家賃補助は69件から66件に減少し、1人当たりの上限額を1万円に引き下げたため決算額は、前年度比で87%に減少しています。家賃補助は、公営住宅の提供と並ぶ住宅対策の主要な施策です。収入に対してあまりに高い家賃となっている高齢者をはじめ、子育て世帯や若者への家賃補助制度を復活するとともに、住替え家賃補助の助成上限を引き上げて充実を図るべきです。

 地球温暖化は引き続き、区政でも喫緊の課題であり、区が本気で取り組むことが求められていますが、23区で当区だけが2050年ゼロカーボン宣言を行っていません。また、省エネ家電買替助成事業を単年度で終了し、再エネ電力切り替え助成事業と電気自動車充電設備助成事業、家庭用燃料電池設置助成事業に縮小したことは認められません。ただちにゼロカーボン宣言をするとともに、区施設の温室効果ガス排出ゼロを実現し、区民向けの省エネ家電買替助成制度を再開して、猛暑の熱中症対策にも寄与するよう、エアコン設置費助成と、住宅太陽光発電設置費助成を実施すべきです。

 第3に、区民の声を聞かずトップダウンの区政運営は認められないからです。

 玉川上水旧水路緑道再整備事業の決算額は、工事費として笹塚、大山緑道のその1工事に、1億8237万円、大山緑道のその2工事に1億80万円、幡ヶ谷緑道のその3工事に1億8920万円のほか、設計委託として、東京ランドスケープ研究所の3億44万円をはじめ、合計で9億4479万円が執行されました。この年度までに緑道整備にかけた費用は累計で約20億6千万円にも上りました。
 テラゾ材を使用するために、笹塚緑道では、歩道整備の材料費は1㎡あたり15万8千円、ベンチは1基290万円が支出され、車止め、水飲みも著しく高額になります。また、農園についても近隣住民の反対意見が多くだされているにもかかわらず。区が住民の声に耳を貸さず、次々と工事を進めることは認められません。緑道整備計画は一から見直すべきです。

 神南二丁目、宇田川町地区第一種市街地再開発事業は、神南小学校を整備してもらうことと引き換えに、区役所のメインエントランスに向かう区道と小学校の余剰容積率をマンション建設のために提供することによって成り立つ事業で、区は事業者と基本協定を締結しました。
 小学校の建替えが民間事業者の事業として行われるため、建築費の高騰や人材不足の中で、権利変換計画の合意など、事業が予定通りに進むかは定かではありません。マスコミ報道では、882億円の総事業費は、最大1245億円まで膨れ上がることが想定され、26年夏から小学校の工事着手となっていますが、先行きは不透明だと報じています。また、再開発組合が事業計画の見直しを進めていると報じられましたが、区が結んだ協定では、建替え計画等の遂行が困難になっても事業者からの協議の申し出がされなければ、区はなすすべがありません。区民の利便性も、子どもの教育環境も犠牲にし、開発事業者だのみの事業に学校建て替えを委ねることは認められません。区が直接建設すべきです。

 新しい学校づくりに関連して、小学校施設建設の長寿命化・改築工事費として1億447万円が執行されていますが、このうち、3869万円は神南小学校を民間が整備するために区が要求した水準が確保できているかの検証のための支出で、区が整備すれば不要なもので認められません。また、予算より4,334万円の超過となったのは、当初予算で想定していなかった13校のフィジビリティスタディの委託を行ったためです。これは今後の建替えの際に複合化などを想定し、各学校の敷地にどれくらいのボリュームの建物が建つかなどの可能性を調査するものですが、学校と他の施設との複合化は、住民への説明もなされておらず、区が一方的に決めるべきではありません。
 また、中学校の長寿命化・改築工事費は10億2624万円で、その内訳は、実施設計費で広尾中学校、松濤中学校、基本設計費で、代々木中学校、一貫校として建て替える鉢山中学校と原宿外苑中学校の基本計画費等となっています。
 区民不在で学校の建て替え計画がすすめられ、広尾中学校と松濤中学校で行われた当初の住民説明会は、建物の高さの2倍の範囲にしか周知しないという考え方で地域住民からなぜ参加をさせないのか等の意見もありました。小中一貫校化が打ち出された2つの中学校には、建替え準備委員会が設置されましたが、鉢山中の保護者や住民代表から、一貫校は決定事項なのか、誰が決めたのかなどの質問や意見が出されても、区は正面から答えずに計画を強行しています。また、区民からは、松濤中学校になぜプールをつくらないのか。子どもたちがかわいそうなどの声も寄せられています。
 こうした区民の意見も聞かず、同意もないまま、子どもたちの学びの場であり、地域のコミュニティと災害時の避難所にもなる学校の建て替えを進めることは認められません。統廃合計画をやめるとともに、建て替え計画についてもそれぞれの学校ごとに、地域住民に広く周知し、区民と学校関係者の声を十分に聞くべきです。

  第4に、財界戦略に従い、大企業の儲け優先の税金の使い方は認められないからです。

 渋谷駅中心五街区整備事業には、渋谷駅街区北側自由通路整備事業と、渋谷駅南口北側自由通路整備事業に4億8550万円が執行されました。駅街区北側自由通路の税金投入額は40億円とされてきましたが、累計で43億8217万円となり当初の予定額を上回りました。第3次の事業計画見直しで公費負担が52億円に増やされましたが、今後、さらに区の負担が増えることになります。これらの事業費は、鉄道事業者や再開発事業者が負担すべきものであり、区民の税金投入は認められません。

 新宮下公園の運営は、指定管理料として1億3004万円で宮下公園パートナーズに委ねられました。指定管理者の自主事業による収入は1億6100万円ですが、その多くは、公園内では原則禁止されている広告による1億1800万円となっています。公園自体が商業施設の附属施設のようになっています。開園以来5年間が経過しており、改めて定期借地料の鑑定を行なって見直すべきです。また、北谷公園の自主事業による指定管理者の収入は2130万円でイベント公園のような利用が日常化しています。パークPFIによる公園整備や、公園の指定管理者による運営は公園の商業的利用を促進するものにほかならず、指定管理はやめ、区直営にして、誰でもいつでも自由に利用できる公園にすべきです。

 グローバル拠点都市推進事業には、前年度を上回る3億3273万円が執行されました。環境整備として、この事業の中心的役割を担うShibuya Startup Deckの運営等に7960万円、グローバル化に1億6741万円、実証・実装に3147万円となっています。グローバル化の中には、区が立ち上げた株式会社シブヤスタートアップスに1億3千万円の追加出資が含まれているように、この事業が目指しているのは、海外からの優れたスタートアップ企業の起業を支援することです。その一方で、区内の事業者むけの直接支援は、融資のほかには街路灯電気代補助やイベント助成など、商店街活動助成の1億4500万円余りにすぎません。
 そもそもスタートアップ支援は財界戦略にもとづいて、新しい技術を取り入れて急成長する企業を作り出す国の産業政策です。区は渋谷から世界に羽ばたくスタートアップを支援するとしていますが、こうした事業への税金投入はやめ、何よりも区民生活を支える商工業者への支援にこそ使うべきです。

 第5に不要不急の事業を進める無駄遣いの予算だからです。

 官民連携事業として一般社団法人渋谷未来デザインに派遣している職員3人分の共済費と退職した区の幹部職員の7月以降の報酬など2094万円を支出しました。
 一般社団法人渋谷未来デザインは、区民の公共財産を出資企業に活用させて、新たな収益事業をおこし儲けをあげさせるための団体です。実際、玉川上水旧水路緑道再整備の農園づくりや水道道路沿道のにぎわい創出を目的とするササハタハツまちラボには、京王電鉄、東急不動産と区が各500万円を支出し、渋谷未来デザインがその先導役を果たして緑道再整備の指定管理でも民間事業者にもうけを上げさせようとしています。また、未来デザインの各事業の詳細などが議会にも報告されず、議会や住民の目が届かないことは重大です。民間企業の利益のために税金や職員、区民の財産を差し出し、住民の声を無視した事業を進めることは自治体の役割ではありません。自治体本来の役割を逸脱した税金投入は認められません。

 ふれあい植物センターの指定管理者の収支は、若干の黒字になりましたが、区が直営で委託している物販と飲食の収支は約2千万円の赤字でした。さらに、区はこの年度に予定されていた加計塚小学校の用地に、農園ハウスを建設する予算を繰り越し、今年度整備しようとしています。
 ふれあい植物センターの運営は、指定管理者に委ねるのではなく直営とし、清掃工場還元施設にふさわしく、地元住民の利用を促進するとともに、2千万円以上赤字のレストランや、農園ハウスの建設は中止すべきです。

 河津さくらの里しぶやには運営費と施設維持管理として、1億4603万円が支出されました。23年度は、二の平渋谷荘が休館になったことと小学校4校の宿泊体験の人数も含まれ、稼働率は8割台に上がりましたが、24年度は7割台に下がりました。区は、宿泊定員が少ないため、子どもの数が多い学校は利用できないとして、隣接地の購入等の検討をはじめましたが、学校の利用は全館を貸切る必要があるため、一般利用の少ない時期しか実施できません。また、二の平渋谷荘が定員を増やしリニューアルオープンしたことで、利用は減ることも懸念されます。この施設は廃止して区民の宿泊補助クーポン券に変えるべきです。

 私は日本共産党渋谷区議団を代表して、認定第2号 令和6年度渋谷区国民健康保険事業会計歳入歳出決算、認定第3号 同介護保険事業会計歳入歳出決算、認定第4号 同後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算に反対の立場から討論します。

 まず、国民健康保険事業会計についてです。
 保険料は、医療分と支援金分の合計で均等割を5,500円、所得割を1.9%も引き上げ、最大で10%を超える大幅な値上げとなりました。介護分も均等割300円、所得割0.37%を引き上げたため、年収400万円の40代夫婦と学齢期の子ども2人の世帯では61万8,105円にもなり、7万5,491円の大幅値上げです。同じ家族構成の協会けんぽ加入世帯の保険料は、0.24%の引下げになったため、国保世帯の保険料は2.7倍もの負担になり、ますます保険料格差が広がりました。協会けんぽと大きな格差があるのは、明らかに国の制度設計の問題であり、制度間の格差を是正するのは国の責任です。子どもの均等割りをなくすべきです。東京都も、国保財政の運営を担う保険者として、区市町村が行っているように応分の負担をすべきです。
 また、均等割の大幅値上げによって、低所得者にも情け容赦なく重い負担を押し付け、保険料の滞納率も急増しています。医療を受ける権利が制限されています。保険料の値上げはやめ、誰もが無理なく払える保険料にすべきです。
 渋谷区は、基礎的自治体として被保険者の実態を踏まえた保険料を決定する立場に立つべきにもかかわらず、国保料軽減のための公費負担を削減し特別区長会で合意した統一保険料をそのまま区民に押しつけ20年連続で保険料を引上げたことは、社会保障として皆保険制度のかなめである国民健康保険制度の否定につながるもので、認められません。

 次に、介護保険事業会計についてです。
 第9期保険料は、物価高騰が継続し、年金が実質目減りしているにもかかわらず、全段階の保険料が引上げとなり、無年金者の人が納める第1段階でも4.9%、本人が住民税非課税の第5段階では7.8%の値上げとなりました。区は保険料軽減のために23億円ある介護給付費準備基金を8億円取り崩しますが、第7期の期末残高の14億円までは、何ら問題なく取り崩すことができます。15億円残っている介護給付費準備基金から3年間で1億2,000万円活用すれば、第5段階までの住民税本人非課税の方の保険料は値上げせずに済みました。年金が実質マイナスになっている中、保険料を引き上げた決算は認められません。

 最後に、後期高齢者医療事業会計についてです。
 2024年度の保険料は、均等割で900円、所得割は0.18%の引上げで、1人当たりの保険料は11万1,356円となり、6,514円の値上げとなりました。
 また、医療費窓口負担についても、22年度から2割負担の導入で年金が200万円以上の高齢者の負担は2倍にされました。急速な物価高騰の中で、実質年金が下がり続けている中での保険料値上げは、高齢者の暮らしと医療控えをますます深刻にするもので、認められません。
 そもそも、医療にかかる機会の多い75歳以上の高齢者だけで構成する医療保険制度をつくれば、高い保険料と窓口負担にならざるを得ないのは明らかです。高齢者いじめのこの保険制度は廃止して、国の責任で全ての高齢者が安心して医療にかかれる医療制度を構築すべきです。
 以上、3事業会計への反対討論とします。

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